Bloody wolf
「じゃあ、ご馳走になったし。そろそろ帰る」

食事が終わって、食後の珈琲を飲むと響は立ち上がる。

本当に飯食ったら帰んのかよ。


「えっ? もう帰るの? もっとお話ししようよ」

いいぞ、光希。

「ん、帰る」

安定のマイペースだな。


「ゲームして遊ぼうぜ。今日は金曜だし、明日休みだろ?」

ゲームを始めようとテレビの前のラグに座ってた瑠偉が振り返る。


「嫌、眠いもん」

「おいおい、まだ22時だぜ?」

「家に帰って、お風呂入ったらいい時間になるよ」

瑠偉の言う事は尽く却下される。


「バイク乗って、ぶらりと出掛けないか?」

珍しく豪が誘ってる。

「・・・バイク、ね」

お、ちょっと考えてる。

いいぞ、その調子だ。


「暴走しないから、警察に追われる心配もない」

豪は中々上手い具合に話を運んでいく。


「海岸線とか、走ると気持ちいいぞ」

俺も一押しする。

「・・・・・」

よしよし、考えてる。


「ヘルメットをかぶって安全な走行をすれば、普通のツーリングですよ。それに顔も誰だかバレませんし」

秋道も参戦してくる。


「俺! 俺の後ろに乗せるぜ!」

瑠偉の言葉に、響の眉間にシワがよる。

チッ・・・瑠偉、余計なこと言うな。


「瑠偉は粗っぽいからダメだよぉ。僕なら安全だよ」

自分を指差す光希は、ね? と小首を傾げる。


「言い出しっぺの俺の後ろだろ」

豪は当然だと言うように胸を張る。


待てよ、お前ら。

どうして、響を後ろに乗せたがる。

その役目は俺のものだろうが。


「・・・でもなぁ。目立ちたくないし」

バイクに乗ることに、ずいぶんと心を惹かれてる感じの響は迷ったように言う。


「響ちゃんだなんて、バレないって」

「そうそう、フルフェイス被れば大丈夫だって」

「風を切って走るのは気持ちいいぞ」

光希、瑠偉、豪が期待を込めた表情で響を説得する。


「秋道、女物のヘルメット、確かあったよな?」

俺は秋道に近付いて耳打ちする。

「ええ。今回はあれを使ってもらいましょう。響さんの物は後日新しく準備しておきます」

小声で返してきた秋道に頷いた。

昔、付き合ってた女が使ってたヘルメットだが、今回はそれで勘弁して貰おう。

響は、そんな細かいことを気にするような奴でもねぇだろうしな。
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