Bloody wolf
「響、行こうぜ。ヘルメットなら直ぐに用意できるし」

な? と響を振り返る。


「・・・ん」

「よし。バイクの準備をさせろ」

俺は誰に言うでもなく指示を出す。

響の気が変わらねぇうちに、とっとと出掛ける。


「よ~し、俺、下の連中に点検頼んでくる」

ゲーム機のリモコンを放り投げると、瑠偉は幹部室を飛び出していく。


「僕も準備手伝う」

嬉しそうに光希も後に続いた。


「よかったら、ぜひ俺の後ろ乗ってくれ」

豪は響にそう言うと、返事も聞かずに部屋を出ていく。


「ライバル多そうですね」

意地悪く目尻を下げた秋道に、

「うっせぇ」

と睨み付けた。


マジで、なんだよ、これ。

俺の後ろに乗るに決まってんだろ。


あいつら名乗りを上げてんじゃねぇ。


チラリと響を見ると、感情の分からない表情で幹部室の開け放たれたままのドアを見ていて。


まぁ、嫌がってる様子でもねぇし、一先ずこれで良しとするか。

フッと口元を緩めた俺を秋道が安心した表情で見ていたらしい。










準備が整ったと連絡が来て、俺達は一階へと降りる。

5台のバイクが並ぶそこへと、響を連れて向かえば、瑠偉達が順場万端で待ちわびていた。


「響ちゃん、これが俺の愛車」

瑠偉がポンポンとシートを叩いてアピールする。

「あ、交差点に突っ込んできたやつだ」

へぇ・・・と言いながら瑠偉のバイクを興味津々で見てる響。

ちょっと、ジェラシーが沸いてくる。


「僕のはこれ。かっこいいでしょ」

見て見てとアピールする光希に、

「そうなんだ。凄いね」

視線を光希のバイクへと向けた響は珍しそうに見てる。

「俺の相棒も見てくれ」

豪は響の腕を引く。


「・・・おい」

さすがに声が出た。

俺でもそう簡単に触れらんねぇのに、豪の奴躊躇なく触ってんじゃねぇよ。


自分でも分かるぐらいに殺気が漏れてた。


「どうかした? 晴成」

響が不思議そうな顔で俺を見る。


「・・・いや、なんでもねぇ」

告白もしてねぇのに、嫉妬してるだなんて知られる訳にいかねぇ。

「そっ」

直ぐに俺に興味を無くした響に落胆する。



肩を落とした俺に、

「大丈夫ですか?」

秋道だけが労ってくれる。

「・・・はぁ。色々と遠すぎる」

遠い目をした俺は間違ってねぇと思う。
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