Bloody wolf
「もういいよね」
話を終わらせて背を向ける。
こんな茶番に付き合ってらんない。
「ちょっと待ちなさいよ。芽依はね、及川君を追いかけてサッカー部のマネージャーまでやってるのよ」
「だから?」
そんなの私に関係ないことだ。
振り返って冷たい視線を向けた私に、ショートカットがピクッと肩を揺らす。
「だ、だから、芽依の邪魔しないで」
勢いよく叫んだショートカット。
「あなたさ、その子の為にしゃしゃり出てきただけなんでしょ? いい加減にしてくんない」
「しゃ、しゃしゃり出るって」
憤慨するショートカットを無視して、後ろで隠れてる大人しい子に目を向けた。
「それと、あなた。自分の事なのに、友達任せで高みの見物なんだね。大したご身分だよ」
フフフと笑って、今度こそ背を向ける。
ショートカットがヒステリックに叫んでも、大人しい子が泣きそうに顔を歪めてても、私はもう振り向くことはなかった。
くだらない恋愛ごとに巻き込まれるなんてごめんなのよ。
だいたい、私に言うんじゃなくて及川君に直接言ってくれないかな。
あ~ほんと、冗談じゃないわ。
無関係なのに巻き込まれたモヤモヤが胸の奥に残った。
好きだとか、愛してるとか、そんなの幻想でしかないって言うのに。
いちいち巻き込まないでほしい。
最近の私は巻き込まれた体質なのかも知れない。
そう思ったら、なぜだか笑えた。
私が一番信じてないものに巻き込まれるなんてね。
下校途中の生徒の波に乗るように校門を出た。
チラチラと向けられる視線はいつもと変わらない。
近付いてくるなオーラを漂わせて、バイト先へと向かった。