いつか、きっと。
「……寒うなかか?明日美」
「うん、平気」
『嫁入り前の女の子ば夜遅うまで連れ歩くとは彼氏失格と思われるかもしれんけん、八時までには帰ろうで』
なんて言われてしまい、早めにマックを出てバスに乗って帰ってきた。
しかしバスを降りたのは七時半ちょっと過ぎで、正直物足りない気がしていた。
「失格もなにも、どうせ偽者彼氏とに……」
「あ?なんか言ったか?明日美が寒うなかって言うとなら、ちょっと公園に寄っていくか」
「えっ!?あ、うん、行こう行こう!」
危ない、心の声が無意識に漏れてたみたい。
でもあと少し一緒にいられるのは嬉しい。
ジャングルジムの横にある休憩スペースのベンチに二人並んで腰かけた。
この公園にはいろんな思い出がある。
友也と初めて出会ったのもこの場所だった。
いま友也とこうしていられるのは、あの日の出会いがあったからだよね。
それから、中学の卒業式の日。
雨宿りするためにここに来た。
その時、友也から告白されるんじゃないかって期待したけど……。
実際は『高校生の間は彼女は作らん』っていう決意表明みたいなもので、私が望んでた告白とは違ってた。
高一の夏にもここに来て、卒業式以来のキスをした。
その後、私と友也は偽者の彼氏彼女になった。
そうなってからはもう数えきれないくらいのキスを交わしてきた私たち。
「なあ、明日美はさ……。本当のところはどう思っとる?」
「ほ、本当のところ?……どう思っとるって、何が?」
「"偽者彼氏"なんか要らんって思っとるとか……」
…………え?
さっき私がうっかり呟いてしまったの、聞こえてたんだ!
「まさか!"偽者"でもなんでも、友也が私の彼氏でいてくれて嬉しかって思っとる。要らんとか思うわけなかやろ?」
ちょっとだけ嘘ついた。
本当は"偽者"なんかじゃなく、本物の彼氏だったらいいなって思ってる。
でももしそれを言ってしまったら、途端に契約解除されちゃうんじゃないかって不安なの。
だったら"偽者"でもいいから彼氏でいて欲しい。
これが私の本音。
「そうか?要らんって言われんでホッとした…………あ」
ポツ、ポツ、ポツ…………。
急に雨が降り出したようだ。
『雨は夜更け過ぎに~』なんて有名なクリスマスソングを思い出したけど、今日は季節外れの暖かさだったし雪にはならないだろう。
ホワイトクリスマスならぬ、レイニークリスマスなんて。
そういえば小学六年生のクリスマスイヴの日も雨が降っていた。
その日は終業式の後で涼介くんから通知表を取られて追いかけたり。
っていうか、その後……友也と……。