いつか、きっと。
「降ってきたね、雨。どうする?ひどうならんうちに走って帰ったほうが……」

友也とのファーストキスを思い出してしまい、恥ずかしくなって立ち上がり友也に背を向けてしまった。

自分がいまどんな表情をしているのか分からなくて、友也に顔を見られたくなかったから……。

自分の顔を友也の視界から外したくてとっさにとった行動だったけど、そうしたことで友也の行動も読めなくなってた。

「明日美っ…………」

………………………………へ?

「本当は卒業の時に言おうかって思いよったけど、明日美も気にしとるやろうけん今聞いて。契約延長してくれんか?無期限で」

どうしよう、心臓がバクバク言って頭がクラクラしてる。

なぜなら今私は、友也に後ろから抱きしめられているから。

こんな状態できちんと友也の話を冷静に聞く事なんて出来るの?

「友也……。私、これからも友也の彼女でいていいの……?」

『偽者』という言葉はあえて出さなかった。

「当たり前やろ!俺が彼女にしたかって思うとは明日美しかおらん……」

『偽者でも』って言葉が聞こえたような気がしたけど、今日だけは聞かなかったフリをしよう。

友也も敢えて言わないでいてくれたんだよね?

ありがとう友也。

私ちゃんと分かってるから大丈夫だよ。

こうして抱き締められている今だけは、本物の恋人同士でいさせて。

それくらい、いいよね?

私の気持ちに応えるかのように友也の腕に力が込められた。

少し息苦しいけど、今の想いを忘れないように身体に憶えさせたい。

このままずっと……と思ったけど意外とあっさり拘束を解かれ、寂しくなる暇もなく身体をくるっと反転させられた。

「明日美、俺は明日美のこと…………」

えっなに?私のこと?

友也の私を見つめる目が熱っぽくて、心拍が一気に急上昇する。

次の言葉を期待して友也の唇を私も熱く見つめた。

その唇が少し開いて、いよいよだと緊張が高まる。

だけど友也が私にくれたのは、言葉ではなく……。

熱い熱い、キスだった。

私が本当に欲しかったのは、言葉なんかじゃない。

きっとキスが欲しかったんだ。

深い深いキスを交わしながら髪を撫でられ、さっきみたいに抱き締められる。

私も友也の背中に腕を絡みつかせた。

時々息継ぎするみたいに離れても、また直ぐに重なりあう唇と唇。

いままで何回キスしてきたか数えきれないけど……。

こんなにも長く長くお互いを求め合い、貪り合うようなキスは始めてだった。



雨が降る聖夜に、メリークリスマス。


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