いつか、きっと。
包み込まれた手で友也の温もりを感じていたら、不意に離されてしまった。

つい未練がましく友也を見てしまうけど、そんな私に構う素振りも見せずに二人の間にあった小さなテーブルを横に押し退ける。

……何をするつもり?

黙ったまま息を飲んで友也を見つめると、友也も私を見つめたまま言った。

「明日美。ぎゅーってしてもよか?」

「なっなんでそがんことば私に聞くと!?恥ずかしかとけど……」

もう、そこは同意なんか得なくてもいいのに。

何も聞かずに抱きしめてくれたらいいのに。

「明日美が嫌ならせんけど……」

友也ってば、私のことからかってるの?

「嫌なわけなか……」

「そんなら明日美の方からおねだりして。俺にどがんして欲しかとかハッキリ言うて」

友也完全に楽しんでるよね?

私からおねだりなんてしたこと……ないとは言えないかもしれないけど。

「じゃ、じゃあ、思いっきり……抱きしめて欲しか」

「明日美からのおねだりやけん聞かん訳にはいかんよな。じゃ、遠慮なく」

なんか腑に落ちないでもないけど、この際そんなことはどうでもいい。

壁際に座っていた私の背中に回り込んで後ろから優しくぎゅーっと抱きしめてくれる友也。

「……これでよか?」

「うん……ありがとう」

消えそうなくらいの小声しか出せない。

だって恥ずかしい……。

顔が火照ってるのが分かるから、真っ赤になってるんだろうけど、後ろの友也には見えなくて良かった。

こんな風に抱きしめられたのは昨年のクリスマスイヴ以来だ。

「明日美、耳の真っ赤に染まっとるばい。可愛か」

なっなんですって!

『可愛か』とか、耳元で囁くなんて……反則!!

ますます熱を帯びてきて赤みが増しそうで焦るけど、耳だけで良かったかも。

だけどそうすると友也の顔も見たくなる。

初めて聞いた『可愛か』なんて台詞を一体どんな顔して言ってくれたんだろう?

「これだけでよかと?他に俺にしてほしかことは無かとか?」

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