いつか、きっと。
じっと私を見つめたまま黙っている友也。

そんな友也を私も黙ったまま見つめる。

しーんと静まり返っている私の部屋には、向こうの部屋からテレビの音が微かに聞こえてくる。

「だっておねだりして欲しかったとやろ?これも十分おねだりしよるつもりけど。ねぇ、私のこと友也はどう見とるとか言うてくれん?」

友也が望んでるような可愛いおねだりではないだろうけど。

この機会を逃してしまったら、もう二度と聞けないかもしれないと思うと、どうしても切羽詰まった聞き方になってしまう。

やっぱり可愛く聞かないとダメ?

私だって友也に可愛いと思ってもらいたいけど……。

このいつまでも続きそうな沈黙をどうしたものかと思い始めたその時、友也が私の両肩に手を置いて、さっきよりも熱い眼差しで私を見てきた。

「俺は明日美のこと、誰よりも可愛かって思っとる。そがん思うとは明日美だけしかおらん。俺は、ずっと前から明日美のこと……」

ドキドキドキドキ……。

さっき抱きしめられた時よりもドキドキが強いような気がする。

『誰よりも可愛か』

『明日美だけしかおらん』

それって、私のこと……もしかして……。



♪ピンポーン♪



…………玄関のチャイムの音。

だけど、多分うちじゃない。

うちだったらもっと大きなチャイム音が響くはずだもの。

さっきのは聞こえるには聞こえたけれど……。



♪ピンポーン♪



「まただ。もしかして友也んちじゃなかと?」

「でもうち今誰もおらんばい。しかもなんでこがん時間に」

確かにそうよね。

いったい誰が訪ねて来てるんだろうか。

気になって様子を窺おうかとも思ったけど、もし変な人だったらと思うと出来なかった。

「もう諦めたとかな?」


♪ピンポーン♪


ビックリした!!

もう鳴らないだろうと安心しかけた時に大きく響いたチャイム。

私たちは自然とお互いの手を取り合っていた。

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