いつか、きっと。
友也、これも私のため?

私がお母さんとお父さんには『本当に付き合っとることにしたか』って言って、フリってことを隠してるから。

だから二人を安心させようとしてくれてるの……?

私のワガママでこんな風に友也に嘘をつかせてしまってるのかと思うと、胸がざわざわしてくる。

ごめんね、友也。

お父さんとお母さんに対して気を遣わせてしまって。

ごめんね、お父さんお母さん。

私が友也の"偽者彼女"ってことを隠してて。

「友也のことはちゃんと信じとるさ。お前たちがどがん付き合いばしよっとかは明日美のことば見とけばよう分かる。だけん二人の付き合いに関してはなんも言うつもりはなか。もう二人とも大人になりよるとやけんな」

お父さん、友也のことも私のこともちゃんと信用してくれてるんだね。

嬉しい……嬉しいけど、ちょっぴり複雑。

確かに私が"偽者"ってことを隠したいって言ったんだけど。

契約が無期限になって、このままずっと嘘をついたままでいいのかなって考えてしまう私も確かにいた。

だからといって両親に本当のことを打ち明けるつもりなんてないけど。

今更になって打ち明けるくらいなら、友也の言うとおりに最初から付き合うフリだってこと知らせておくべきだったってことになるし。

私は嘘ついてまで"偽者"って事実を隠して来たこと、後悔なんかしていない。

この嘘はいつか"本物"にすることで許してもらえたら……なんて。

自分勝手だと分かってはいるけど、そんなことを望んでしまうのだ。

いまはちょっとだけ後ろめたく思ってしまうけど、それは自分で選んだ道。

こんな痛みくらい我慢できなくてどうするの。

契約は無期限なんだもの、これからも私は友也の"偽者彼女"を続けるって決めたんだから。

友也から望まれる限り、私はずっと"彼女"として友也のそばに居たい。

「ね、友也……。『アーン』して?」

お父さんとお母さんが見てる目の前で、爪楊枝に刺したたこ焼きを友也の口の前に近付ける。

「…………アーン」

ちょっと耳を赤くした友也が口を大きく開け、爪楊枝からたこ焼きを奪っていった。

……私の指を唇で掠めるようにして。


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