いつか、きっと。

就職一年目の日々は学生時代とは比べようのないほどに、あっという間に過ぎ去っていった。

自分の身を置いている環境の変化が大きいんだろう。

仕事を教わるにも、どうしてこういう作業が必要なのかとか、意味も分からずにやらされているって感じでモチベーションがなかなか上がらず悩むことも多かった。

先輩に相談した方がいいのかもしれないけど、何が解らないのかさえよく分かっていないようでは、相談のしようもない。

ただ与えられた仕事を教わった通りにこなすだけで精一杯だった。

高校の部活でパソコンの操作にも慣れていたから、パソコンのスキルには自信があったのに。

それも甘かったと思い知った。

"まったく触ったことがない"とか"キーの位置すら知らない"とかいういわゆる"ド素人"よりはいくらかマシ、という程度。

これから実務経験を積んでいくだけではきっと足りないだろうから、自分で勉強を重ねていくことも必要だと感じている。


自分で勉強しようだなんて、高校までの私だったらそんなこと考えなかったかも知れない。

"苦手な課題は後回し"逃げられるものなら逃げたいのが本音だった。

そんな私の意識を変えてくれたのは、友也だ。

友也は頭がいいから勉強もできて苦労なんて知らないんだろうと羨ましく思っていたけど、それは思い違いだったのかも。

会社の同僚たちと雑談していた時に、友達の話として友也のことを話して聞かせた事がある。

高校は特待生、大学は推薦試験で合格したっていうこと。

それはただ単に頭がいいからというだけではないというのだ。

友也は私の知らないところで努力を重ねてきたんだろう。

私には想像もつかないくらいたくさんの努力を。

天才肌なのかと思い込んでいたけど、それは友也がそう見えるようにしていただけのこと。

人に見せないように陰で努力を積み重ねた結果、今の友也が在る。

そんなことを今まで知ろうともしていなかった自分が恥ずかしい。

私ももっと努力して、立派な社会人になれるよう頑張ろう。

友也の彼女として恥ずかしくないように。

友也に必要とされる女でいられるように。


< 115 / 317 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop