いつか、きっと。
名前って確か『涼介』だったよね。

男の子も呼び方や呼ばれ方って気にするものなの?

「わかった……涼介、くん」

やっぱり、いきなり呼び捨てっていうのは呼びにくい。

「ま、いいか。じゃあ俺もお前のこと『明日美』って呼んでよか?」

私が『涼介くん』って呼ぶんだったら『生田』って呼ばれるのもなんだか変な感じだもんね。

「そうだね……よかよ」

私の返事を聞いてホッとしたような涼介くんだったけど、私が手を出している事に気付いてやっと、後ろに隠していた成績表を返してくれる気になったようだ。

だけどその時、廊下の向こう側から友也が走って来るのが見えた。

「おい涼介!お前まだ返しとらんとか?さっさ返せさ!」

そう言うと涼介くんに掴みかかった友也。

せっかく返してくれそうな雰囲気だったのに、そんなことされたら返しにくくなるんじゃ……。

「うっさか!お前にはやらん!明日美ほら!!」

そう言うと涼介くんは、私の方に向かって成績表を投げてきた。

だけど、すごい勢いがついていたので怖くなった私は反射神経でつい避けてしまった。

勢いに乗った成績表は紙飛行機、いや、フリスビーのようにスイーっと廊下を真っ直ぐに飛んで行ってしまった。

「あっ!」


飛んで行ってしまった成績表を思わずボーっと眺めてしまっていた。

あんまりきれいに飛んで行ったもんだから、見とれて……。

そんな私を置いて、成績表を追いかけていった友也。

「そんじゃまたな!明日美、バイバイ」

涼介くんは友也が行ってしまったのをいいことに、私にバイバイと言って階段を下りていってしまった。

あ、友也が成績表を拾ってくれてる。

私も友也の元へと走った。

友也もこっちに向かって歩いてきていた。

やっと成績表が手元に戻って来ると安心したその時、ハプニングが起きた。

足元をまったく気にしていなかった私が足を滑らせてしまったのだ。

「きゃっ!!」

ツルッと滑ってその場で転倒。

「おっおい、明日美!」

すぐそばまで来ていた友也が必死に手を伸ばして、私が転ぶのを助けようとしてくれた。

一瞬腕が引っ張られたのは友也が引っ張り起こしてくれようとしてくれたんだろうけど、友也もバランスを崩したようで、一緒に倒れてきた。

私が友也に押し倒されるような形になって、ぶつかる!と思った私はとっさに目をぎゅっとつぶった。

ゴツン!!って衝撃がくるかと覚悟していた私には、何が起こったのかよく分からなかった。

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