いつか、きっと。
………………寝た?

友也、実はいっぱいいっぱいだったのかな。

いつも余裕綽々で滅多に動じたりしないけど、今日の友也はお酒を飲んだせいか普段私が見ている姿とはどこか違っていた。

『私はまだ大人になりきれとらんとかもしれん』

友也も同じなのかも。

私たちは二十歳になったというだけで大人になるのはまだこれからなんだろう。

友也が眠ったのを見届けたら帰ると言ったけど、もうしばらくここに居てもいいかな……?

さすがに添い寝はできないけど、せめてこれくらいなら大丈夫かな。

布団の中にそっと手を忍ばせる。

こっちを向いて横向きになったまま眠ってしまった友也の手を探りだし、私の両手で包み込む。

友也と私の体温が混じり合って温かい。

もし友也の具合が悪くならなかったら……。

私たちはあのまま、先に進んでしまっていたのかな。

友也、必死で私に何かを告げようとしていたようだった。

何を言おうとしていたんだろう?



大人にまだなり切れていない私たちは、恋と愛の狭間で漂っている。

焦ってはダメ。

急いで大人にならなくたっていい。

頭では分かっているつもりでいるけど……。

心はそんなに簡単に割り切れるものじゃない。

ねぇ、友也。

さっき私に言った『明日美行くなっ』てどういう意味?

この部屋から居なくなるなってこと?

それとも…………。

友也から離れるなってこと?

これから先、ずっと?

それは私が自分に都合よく、そうだったらいいなって思ってるだけかも。

私たちが恋よりもっと深い愛を知る事はできるのだろうか。








そして季節は移ろい、時を重ね……。

友也は大学を卒業し、小学校の教師となった。

私たちの関係は二十歳のころから特に変わったこともなく。

私はずっと偽者彼女のまま。

時だけが過ぎ去っていく。




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