いつか、きっと。
「東京は楽しかった?田代先輩もすっかり都会人になったばいね。先輩が長崎に帰ってくることはなかとかな。友也も会いたかっじゃなかとかなぁ」

「うん……。仕事忙しかって言いよったし。でも本当は帰りたかとやろうなって思う」

そうだよね、未来にももっと会いたいんだろうし。

「でもね、テツくんは仕事だけじゃなくて色んな事情ば抱えとるけんね……。なかなか思うごといかんとさ」

仕事以外の事情?

未来と先輩の間にも色々あるんだろうな。

私と友也の間に他人には言えない事情があるように……。

どんな事情かは知らないけれど、二人は正真正銘の恋人同士なんだから。

きっと強い絆で結ばれているはず。

その絆は未来にとって揺るぎないかけがえのないものなんだろうな。

私と友也には存在することのない絆。

「遠距離恋愛ってなかなか会えんけん辛かよね。そいとに未来は先輩と上手くいっとるけんすごかって思うよ」

私たちがもし離れ離れになったとしたら、どうなるの?

……終わるんじゃないかな。



『明日美行くなっ!』



友也の二十歳の誕生日。

まるで悪夢にうなされでもしたように私を必死に呼んでいたことが今でも忘れられない。

まさか、私が友也から離れるなんて有り得ないのに。

「でもさ、明日美と御子柴くんば見とったら思うとよ。やっぱり自分の近くにおってくれる人がよかとかなって。いくらテツくんが私のことば愛してくれても、すぐに会えんとは辛かったりするもん。だけんね私も結構悩みの多かとよ。明日美には分からんやろ?」

まただ。

未来はたまに私にそういうことを平気で言ってくる。

先輩と離れているから不安もあるだろうし辛いのも分かるつもりだから、なるべく聞き流すようにはしてるんだけど。

「確かにね。私と友也は家も隣同士やし、同じ長崎で働きよるけん未来たちみたいに離れたことってなか。でもさ、離れてるけんこそお互いば想う気持ちって強くなるんじゃないと?絆の深さっていうか……」

「そうならよかけどね……」

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