いつか、きっと。
ゆっくりと拘束を解かれ、二人じっと見つめ合う。

「仲直りって……?」

私の心は勝手に期待して、高鳴る鼓動を抑えることができない。

早く、早くと、目で訴える。

「じゃ…………目ぇ瞑って」

友也の指示に従い、大人しく目を閉じた。

私の欲しいものをくれるのなら、なんだって言うことを聞いてしまいそう。

お願い……早くちょうだい。

肩を優しく掴まれ、友也の顔が近づいてくる気配に胸を踊らせる。

だけど、直ぐには触れてくれない。

……チュ。

えっ!?

期待して待ちわびた唇ではなく、おでこへと落ちてきたキス。

「これが、仲直りの証。もう目開けてよかぞ」

やだ、こんな子ども騙しみたいなの。

「明日美?おい、明日美ってば」

「悪かけど、こいじゃ仲直りできん」

私はまだ目を瞑ったまま。

だから今、友也がどんな顔で私を見てるのかも分からない。

「足りんよ……。全然物足りん。もっと本気のやつ、ちょうだい」

「じゃ、目開けろよ」

な、なんで?

してくれないの?

もしかして怒らせちゃったかなと不安になり、怖くて目を開けられない。

「怒っとる……?友也」

返事の代わりに閉じたままの瞼に温かい感触が。

友也の優しい唇は瞼だけではなく、鼻の頭や頬や耳にも触れてくる。

でもいくら待っても唇には触れてくれない。

もう我慢できなくなって、降参するかのように目を開けた。

「ねぇ、友也っ」

「今度は目、閉じるなよ」

有無を言わさぬような低い声で私に告げると、さっきまでの優しさが嘘のように荒々しく唇を塞がれた。

思わず目を閉じそうになったけど命令に逆らえない私は、友也と至近距離で熱く視線を絡ませながらキスを貪った。

友也の舌の熱さに、身も心も焦がされていく。

たまに唇を舐められたり挟まれたりするのが視界に入るから、ものすごく生々しく感じてしまう。

『私、いま友也と、キスしてる』

体の奥がジンジンと痺れて、どうにかなりそう。

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