いつか、きっと。
なんだか、表情も言い方も穏やかではあるけど……。

なんて言えばいいんだろう?

少しだけ不穏な空気を感じてしまった。

『瀬名くん』なんて、いつもは"くん"付けなんてしないのに。

同い年なんだから呼び捨てでもいいんじゃないのかな。

それにしても私のこと『お世話になってます』なんてきちんと挨拶してくれるところが友也らしいというか。

そして『明日美の彼氏』って……。

嬉しいけど、照れる。

「試合とかで何回か会ったことあるよな。けど喋ったことなかったし、どうぞよろしく。同い年やしタメ口でよかろ?だけん俺のことは"瀬名"でも"圭司"でも好きにどうぞ。な、御子柴」

な、なんか若干のぎこちなさが感じられるけど……大丈夫かな?

「それから、青柳さん初めまして。生田の同僚の瀬名圭司です。あの、堅苦しいの苦手やけん『未来ちゃん』って呼ばせてもらってOK?」

「初めまして。私は『未来ちゃん』でOKです。よろしくね瀬名くん!」

四人集合してすぐに和気あいあいって訳にはいかず、お互い探り探りの会話をしながら映画のチケットを買いに行く。

事前にどの映画を観るか考えていたんじゃなくて、行った時点で一番早く見れる映画にしようとなっていた。

タイミング勝負なのでどんなジャンルでどんな内容の映画が当たるのかドキドキしながらチケットカウンターへ。

十時ちょうどに始まる映画が二つあって、一つは大人気テレビアニメの映画化されたもの。

もう一つは洋画のラブコメディ。

春休み中という事もあって、アニメの方はほぼ満席に近かった。

という訳で、まだ席に余裕のある洋画を観ることになった。

「俺は明日美の分も一緒に買うけん、瀬名は青柳さんの分もな。それでよかやろ?」

「ああ、俺もそのつもりやったし」

友也も瀬名くんも当たり前みたいにチケットを買ってくれた。

さすが、こういう所はスマートだな……二人とも。

「……なん?明日美。ポーっとして。チケット俺がお前の分も一緒に持っとるけんな」

「うん、ありがと友也」

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