いつか、きっと。
インフルエンザを発症して二日間は高熱が続き、頭が朦朧としてただひたすら眠っていた。

起き上がるのは食事とトイレだけ。

タミフルを飲まないといけないので、食欲はなくても何か食べる必要があった。

「明日美ー起きとる?食べとうなかかも知れんけど、ちょっとでもよかけん食べんば。すりおろしりんごでも食べるね?」

「そしたら、すりおろさんちゃよかけん、りんご食べる」

会話はふすま越し。

私は自分の部屋に隔離された状態なのだ。

トイレに行くにも一苦労。

誰もいない時だったら気にしなくていいけど、お母さんと出くわそうものなら大慌てになってしまう。

「ちょっと!トイレならトイレって部屋ば出る前に言わんね!」

和室の方に引っ込みながら叫ぶお母さん。

まるで私のことをバイキン扱いだ。

「だって……。大声出すともきつかとよ。トイレくらい自由に行かせてよ……」

「分かった。そんなら携帯で知らせんね。メールでよかけん」

メール……。

それなら確かに大声出さなくて済むけど、そこまでしないといけないの?

そこでやっと私は携帯を放置しているってことを思い出した。

やっぱり充電切れてる。

まずは充電器に繋いで、しばらくしてから電源を入れてみた。

着信履歴が二件。

どっちも未来からだった。

電池切れになる前にかけてきたんだろうな。

友也からの着信はなかったみたい。

メールが何件か入っていて、その中の一件が未来からだった。

『明日美に話したい事があります。連絡ください』

なにこれ。

一方的な内容に腹が立ってしまった。

電源が切れた後も電話かけてきたのかもしれない。

私が未来からの電話に出るのが嫌で電源を切ったとでも思っているんだろうか。

たった一行の文章から苛立ちが感じられる。

こっちの事情も知らないくせに…………。

タミフルの効き目が強すぎるのか、頭がボーっとして座ってるだけでもフラフラしてしまう。

仕方なくまた横になって、携帯の電源を切る。

友也からのメールは……なかった。

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