いつか、きっと。
熱が平熱まで下がり、自分の部屋にいるのも飽きてきた土曜日。

やっと隔離から解放され、自由に家の中を行き来することを許された。

その代わりマスク着用が義務付けられてるけど、仕方がない。

「明日美、ちょっと聞きたかことのあるとけど。もう具合はよかね?」

私と同じようにきっちりマスクを着用しているお母さん。

マスクのせいで表情が読みづらいけど、声色は穏やかで優しい。

「うん大丈夫ばい。心配かけてごめんね。月曜日から仕事にも行けそうやし。お母さんとお父さんにうつらんで良かった」

本当に迷惑かけてしまった。

ただ寝ていただけの私より、世話してくれたお母さんの方が大変だったはず。

お父さんも食欲がない私のために、私が好きなものや食べやすそうなものを買ってきてくれた。

家族って温かくてありがたいなと感謝の気持ちでいっぱいだ。

「そがんことは気にせんでよかと。そいよりも、どうしても明日美に聞きたかことのあって。……友也くんのこと」

来たっ!

やっぱり、そのうち聞かれるだろうなとは思っていたけど。

病み上がり……厳密にはまだ病み中……。

心配してくれてるのは分かるんだけどね。

「友也が……どうかしたと?」

「どうかしたって……。そいはこっちの台詞ばい。あがんずぶ濡れで帰ってきて、なんも思わん方がおかしかやろ?あんたがインフルって分かって御子柴さんとのランチ断ったとよ。友也くん大丈夫やったか心配で聞いたら、濡れてもおらんし全然平気って言うし」

そりゃそうよね。

友也と未来は車に乗っていたんだから、濡れるわけないし。

……ちょ、ちょっと待って!

「お母さん、御子柴さんに私がインフルってこと言うたと!?ってことは友也にも知られてしもうたと?」

「そりゃそうやろね。っていうか、言うとらんとね!?あんたねー心配させとうなかとかもしれんけど、普通メールくらいするやろ。彼氏に隠し事するとはいかんばい」

彼氏!?

あ、ああそうよね。

一応彼氏だよね、偽者の。

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