いつか、きっと。
アパートの階段下に急いで駆け込み、そのまま階段を駆け上がる。

家の玄関ドアを閉じてしまってからじっと耳を澄ましてみるけど、友也が階段を上がってくる足音は聞こえなかった。

もしかして追いかけてくるかも?

なんて思ってしまったけど、その心配は無用だったらしい。

ホッとしたのか、ガッカリしたのかよく分からないため息をついた。

「あら、明日美お帰り。未来ちゃんとお喋り楽しかった?」

「たっただいまお母さん……。楽しかったよ!さ、お風呂入って明日に備えんば!」

ごめんお母さん……。

今はまだ、上手に嘘をつく自信がないよ。

早く一人になるために、自分の部屋に逃げ込んだ。

カーテンの隙間から、窓の外を窺ってみる。

友也の車が見えたけど、その中にまだ友也がいるのかどうかまでは分からなかった。

こっちからは見えなくても、車からは私が見えているかも知れない。

それとも友也はもう私のことなんて関心ないの?

いつまでも未練がましい気がして、振りきるように窓際から離れた。



『未来も親友、友也も親友』

昔はそれが当たり前だったし、ずっとその関係が続くものだと思っていた。

それなのに、私は友也のことを好きになってしまった。

親友の未来に嘘をついて裏切ることに対して、それほどの罪悪感も感じないくらい、友也だけしか見ていなかった。

いつから友也は私の中で親友ではなくなっていたのだろう。

ずっと自分自身に言い聞かせていただけ。

だって親友だと思っていないと、想いが溢れ出して歯止めがきかなくなるから。

「バチが当たったのかな……」

これから先、私はどうすればいいんだろう。

未来や友也に会って、何事もなかったように笑えるのかな。

多分無理。

今はまだ笑えそうにない。

だって私の心の涙雨は、止むことはないだろうから。

バスルームに飛び込み、熱いシャワーを頭から浴びる。

冷えきった心を温めたいけど、涙雨がそれを邪魔してるよう。

我慢できなくなった私の目からも溢れてくるけど、熱いお湯が流してくれるから平気。

嗚咽を誤魔化すために強すぎるシャワーに打たれながら、思い切り泣いた。



< 210 / 317 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop