いつか、きっと。
ああ、良かった。

瀬名くんまでインフルだったら、私がうつしたかもしれないし。

ピンピンしてるなんて、瀬名くんらしい。

「でもここには居ないって……。こんなに皆忙しくしてるのに、一体どこに居るんですか?」

「瀬名は先週から佐世保に行ってもらっとる。でもな…………」

でも、なんだろう?

何か問題でもあるのかな。

私がよっぽど興味ありそうな顔をしていたのか。

私の反応を見た課長が、続けて話し出した。

「本当はアイツにはこっちにおってもらいたかったとけど。ほら、生田も知っとるやろ?福岡事業所に出向の話。正式に辞令が出て六月には異動になることが決まっとる。そのための準備とかもあるしなぁ」

「じゃあどうして瀬名くんが佐世保に行かないといけなかったんですか?」

「そいはほら、他に適任者の見つからんやったっていうか……。一番の適任者が休んどったけんっていうか……」

課長の視線が私に何かを訴えかけているように思える。

「それってもしかして……私のこと、ですか!?」

確かに、私と瀬名くんは同じ部署で似たような仕事をしている。

瀬名くんは福岡に出向することが決まっているけど、もしかしたら私になる可能性だってあったのだ。

「あ、ああ、まあな……。生田が休んでなかったら、佐世保に行ってもらってたかもしれん。しかしほら、独身やし身軽とはいえ長期出張になるかも分からんし……」

『長期出張』

課長の言葉が私の心にダイレクトに響いた。

これは、もしかしたら神様が私のために用意してくれた逃げ道なのかも……。

「課長!私、行きます佐世保。行かせてくださいっ!!」

私が突然声を張り上げたから、驚いて私を見た課長。

「でもお前、病み上がりだろ。無理させるわけには……」

一応私の身体を気遣ってくれてるようだけど、さっきから目がキラキラと輝いているのが丸分かりですよ……課長。

「ご心配には及びません。身体はもう大丈夫ですから!」

身体、だけはね。

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