いつか、きっと。
そんなにビックリしなくてもいいのに。

今まで長期の出張とかなかったから仕方ないけど。

「荷物は最小限にしとくけん。なんとかなるけん心配いらんよ。向こうに着いてから電話するし。お父さんにも心配せんでよかって言うとってね」

「心配すんなって言うても心配するとが親っていうもんよ。今日帰ってきたらそりゃあビックリするやろ。でも明日美も大人やし、出張ば任されるごとなったとね。さすがお父さんとお母さんの娘ばい。しっかり頑張ってこんねよ!」

お母さん、ありがとう。

皆の期待に応えられるように、頑張って来るから。

「それじゃ、行ってきます」

これ以上話していたら余計なことを言われそうな予感がして、荷物を持ち玄関に向かう。

「そうだ、友也くんには出張のこと言うたと?ケンカしたとやったっけ。友也くんも仕事やろうしね。あとでちゃんと連絡……」

「あっ、あのねお母さん!」

どうしよう。

まだ話す覚悟できてなかったんだけど……。

いつかは話さないといけないこと。

ずっと嘘をつき続けてきたこと。

本当はもっと時間があるときにゆっくり話すべきなんだろう。

お母さんだけでなく、お父さんにも。

でも佐世保に行ったら、いつ帰れるのかまだ分からないし。

タイミングを逃してしまいそうだから、今言わなきゃ。

「私ね、お母さんとお父さんにずっと嘘ついてた。実は私と友也、本当は付き合っとらんかった。お互いの彼氏彼女のフリばしとっただけ。本当は偽者やったとよ……」

直ぐに反応が返ってくるかと思ったけど、お母さんは何か言いたげにしながらも黙ったままだった。

「最初は友也がね、お互いの親だけには本当のことば言おうって言うたとけど。私が断固拒否したと。私は皆ば騙しただけじゃなくて、お母さんとお父さんも騙してしもうた。本当に……ごめんなさい」

「明日美、あのね」

「ごめん、お母さん。言い逃げで悪かけどもう行かんば。お父さんには、帰ってからちゃんと謝るけん。じゃ、行ってきます!」

こんなときも逃げの姿勢の自分が情けなくて、泣きたくなった。

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