いつか、きっと。
長崎駅で切符を書い、シーサイドライナーに乗車。

ダメだ、どうしても思い出してしまう。

私の二十歳の誕生日に、友也がハウステンボスに連れていってくれたこと。

あの日は朝から夜まで一日中ずっと友也と一緒に過ごせて嬉しかった。

大切な思い出として私の心に刻み込まれているけれど、今は思い出すのが辛い。

車窓からハウステンボスの建物を見るのさえ嫌で、一つ前の停車駅からハウステンボスを通り過ぎるまでの間はずっと目を閉じていた。

佐世保駅に到着し、下車して改札を出る。

事前に電話して到着予定時間を知らせたけど、もう来てくれているのだろうか。

「生田ー!お疲れさん。駐車場はあっちやけん、ちょっと歩くけどよかか?」

「お迎えありがとう瀬名くん。わざわざ駅まで来てくれて助かった!しかし瀬名くんも急な出張で大変やったね。課長がすぐ戻ってこいってさ」

「ひゃー!さすが鬼課長やな。俺、相当こき使われとるなぁ」

瀬名くんとこうして話すのも一週間ぶりで、ほっとする。

「課長は瀬名くんのこと頼りにしとっとさ。私も早よう瀬名くんば帰してもよかごと頑張るけん、よろしくね」

「おう、そうやな。ところでインフルやったとな生田。踏んだり蹴ったりで……ご愁傷さま」

う…………。

やっぱり放っておいてくれないんだ。

あんまり今はその話題に触れてほしくなかったのに。

「ああインフルね。めっちゃきつかったよ。もう私なんて消えてなくなればよかとに、とか思ったくらい」

ほら、言いたくないのについネガティブ発言しちゃうじゃない。

傷口に塩を塗るつもり?

「生田に消えてなくなられたら俺が困る」

………………え!?

どういう、意味?

「だってさ、お前がおらんごとなったら俺はずっと佐世保から離れられんかったかもしれんとぞ。そしたら福岡出向も危うか。俺の人生プランめちゃくちゃやっか。あー良かった!生田が消えてしまわんで」

な、なによ……。

瀬名くんったら、まるで私の事を駒扱いしてくれて……!

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