いつか、きっと。
「生田、時間なかけんスパルタでいくぞ!しっかりついてこいよな。まずは俺が説明すっけん、よう見とけよ。質問は説明の一通り終わったら受け付ける。よかか?」

「はい分かりました。瀬名先生のやり方をしっかりマスターしますので、よろしくお願いします!」

「ああ、やり方は最初は俺のやる通りしてもらうけど、慣れたらお前のやり易かごと……。そいはよかけん!いくぞほら」

瀬名くんってチャラそうに見えて実は仕事に関しては真面目。

同じ部署で同期だし同級生。

共通点が多いから、会社の同僚のなかでは一番親しい間柄かも。

今まで友也にはそういうことを言わないようにしてきたけど……。

だって変な勘違いとかされたくなかったし。

それに瀬名くんの話題を持ち出すと友也の機嫌が悪くなるような気がしていたから。

でももうそんな心配をすることもなくなったのかと思うと、心にすきま風が吹いていくような虚しさを覚えた。

「生田よそ見すんな!大事かとこぞ」

先生に叱られた……。

今は集中しなきゃ。




──翌日。

瀬名くんの鬼指導のお陰で、短時間だったけどなんとか引き継ぎを終えることができた。

「まあなんとか形にはなったか。あとは上手くいくもいかんもお前次第やけんな。頼んだぞ生田」

瀬名くんだって佐世保に来てまだ一週間くらいなんだから、私だってやれるはず。

そう考えたら瀬名くんにそこまで偉そうな態度を取られなくてもいいんじゃないかな、なんて思わなくもないけど……。

「でも生田が来てくれて助かった。俺も本当は佐世保に来とる場合じゃなかったとけど、課長から『お前しかおらんけん頼む』って言われれば断る訳にいかんかったけんな。とにかくお前になら安心して任せらるっし、良かったばい。そんじゃ俺は帰るけん」

瀬名くんも忙しいのに大変だったよねきっと。

出向のための異動が迫ってるのに出張とか……。

私が休んでたからでもあるんだし。

「瀬名くんが元気で良かった。仕事のフォローも、ありがとう。福岡に行っても元気でね!それじゃまたね」

「ちょっと待てよ」

< 217 / 317 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop