いつか、きっと。
手を振って見送ろうとした私に、瀬名くんが苦笑いした。

「やっぱり昼飯食ってから帰る。生田に言い忘れとったことのあったとば思い出した」

「え、何?まさか私との別れが惜しくなったとか……。でもしばらく会えんごとなるやろうし、奢ってくれるとならランチ付き合ってやってもよかよ」

瀬名くんと二人でランチなんて初めてかも?

他の同僚と一緒に食事会なら何度もあるけれど。

昨夜も二人きりではなく、職場の人たちがプチ歓送迎会を開いてくれたし。

今生の別れというのは大袈裟だとしても、少しくらい別れを惜しんでもいいかもしれない。

「ちぇ、しっかりしとるな。最初っから奢るつもりやったけどさ。休憩までに残務処理済ますけん、あとでな」

残務処理って……。

もう帰るとか言っておきながら、まだやることあるんじゃないの。

実は最初からそのつもりだったとか?

瀬名くんの奢りなら、とびっきり豪華なランチに連れていってもらおう!



「俺は"今日のランチメニュー"にすっけど、生田は?」

「……私も同じでよか」

やって来たのは職場から近い場所にあるファミレス。

豪華なランチのはずだったのに。

「俺が奢ってやるっていうとに、なんかそん態度は。もっと有り難く思わんか」

「はいはい、有り難いですよ。瀬名くんに期待したとが間違いやった」

本当はそんなこと思ってないけど。

ファミレス好きだし。

ただ、未来と一昨日会ったファミレスと同じだったから、少し気分が落ちただけ。

「俺だって洒落た店ば知らんわけじゃなかけど。そういう店に一緒に行く相手は俺じゃなかろ?」

ぐ…………。

痛いところを突いてくるなぁ。

私に言いたいことって、やっぱりそういうことなのかな。

「そう言えば、もう福岡には何回も行っとるし慣れた?あっちにどのくらいおるとか分からんけど、馴染んだ方が仕事もしやすかやろうね。私やったら福岡に友達おるけん、たまには出張とか行きたかけどねー」

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