いつか、きっと。
「羨ましい……?なんで……」

未来からも言われたのを思い出した。

『明日美のことが羨ましかった』って。

「俺さ、今まで何でも上手くいかんことは他人のせいにしたり、どうせダメって諦めたり投げやりになったりしよった。俺は運の悪かって思い込んでさ。恋愛も自分本位やったかもしれん」

いつになく、真面目な口調で話始めた瀬名くん。

「けどあの日、生田と御子柴が一緒におるとば見とったら、ああこういう感じば俺は求めとったとかもしれんなぁって思った。理想的なカップルやなって。でもそれは簡単にできることじゃなくて、二人が長年一緒に過ごしてきた中で育まれてきたもの。俺はそうなるための努力ばしてこんかったって事に気付かされた」

そんなことを思ってたの?

『理想的なカップル』なんて言われて嬉しくない訳ないけど、残念ながら私たちはそういう間柄ではない。

「瀬名くんも、もしかしたらずっと前から好きな人のおると?」

「ん?あ、ああ、まあな。お前らは小学六年生から隣に住んどるとやったっけ。俺の場合は、幼稚園の頃からの幼馴染みさ。学年はいっこ下けどな。中学でいろいろあって、付き合ったり別れたり……。俺が引っ越して縁の切れたかと思えば高校で再会してまた付き合って。けど俺が就職してからはまた上手くいかんごとなって別れた」

それって、稲佐山デートした後に別れたって言ってた彼女のことかな。

瀬名くんもいろいろあったんだね。

「その幼馴染みの彼女が、いま福岡にいるとか……」

「おっ?なんでバレたとやろ。そうさその通り、福岡におっとさ。だけん俺もそろそろ本気出そうかと思っとる。自分の本当の気持ちば誤魔化してフラフラしてばっかおったけど、今度こそ自分に正直になってみようと思って。俺がそう思えるようになったとは、生田と御子柴のお陰かもしれん」

瀬名くんが本気で好きな彼女なら、上手くいってほしいなって思う。

でも私と友也のお陰だなんて、言い過ぎじゃないかなぁ?


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