いつか、きっと。
「あー、生田さん戻ってきた。よかった!」

会社に着くなり私より後輩の女性社員、横道さんから声をかけられた。

「まだ休憩時間内よね。なんかあったと?」

「携帯にかけても繋がらないから心配になって。長崎の飯田課長から電話がありましたよ。会社にいない間に連絡が取れないのは困るから、会社支給の携帯を持たせるようにきつく言われましたから。はい、これが生田さんのです。もう登録済みですからすぐ使えますよ。これは必ず携帯してください!あと、飯田課長に連絡おねがいしますね」

飯田課長とは、私の直属の上司。

私を佐世保に出張させてくれた恩人でもある。

「えー会社の携帯とか要らんとに。っていうか、私携帯ちゃんと持っとるとに」

自分の携帯をバッグから取り出してみると、電源が落ちていた。

「おかしいなぁ……。フル充電のはずだけど」

充電器は独身寮の部屋にあるから、後で充電しないといけない。

別に誰もかけないだろうし、いいけど。

……あ、お母さんに電話するの忘れてた。

仕事を終え、独身寮に戻ってからお母さんに電話する。

…………出ないな。

知らない携帯の番号からじゃ警戒するよね。

まず、SMSで私だってことを知らせてからにしよう。

会社の携帯からかけたと先に知らせてから、再びかけようとしたら逆にかかってきた。

『明日美!!あんたって娘は本当に心配ばかりさせてから!!』

「ごめんごめんお母さん。私の携帯壊れたみたいでさ……」

充電切れだと思って充電器に繋いでみたけど、なにをどうやっても電源を入れることができなかった。

とりあえず会社の携帯があるから、連絡はできたけど。

『そっちは一人で大変やろう?お母さんが行ってやろうか?』

「よかよ来んで。お父さんが困るたい。私は初めての一人暮らしば満喫する予定やけん心配せんで!」

それでもしつこく心配してくるお母さんをなんとかなだめて電話を切った。

私だってもう大人なんだから。

いつまでも子ども扱いはやめてほしいのに。

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