いつか、きっと。
あ、しまった。

お母さんまた御子柴さん家に遊びに行って、私の事をあれこれと喋ってしまうかもしれないのに。

口止めしといた方が良かったかな。

私が佐世保に出張してるってこと。

でも、もし友也が知ったら少しは私の事を心配してくれるかな?

ああもう!

また自分に都合のいい発想。

そりゃちょっとくらいは気にしてくれるかもしれないけど、それは親友としてなんだから。

友也にとって大事なのは、私じゃなくて未来なんだから……。

今までずっと隣に住んでいて、何日もいないなんてことあったかな。

修学旅行くらいかなぁ。

修学旅行といえば、中学の時の忘れられない思い出が甦る。

友也たちの部屋に遊びに行って、突然真っ暗になって……キスされた。

友也…………。

こうしてしばらく会えない場所で離れていたら、この胸の痛みは和らぐの?

いつしか慣れて平気になる?

家だったら家族を気にして泣くことも出来なかったかもしれない。

今は一人の部屋で、誰のことも気にしなくていい。

それでもなるべく声を出さないようにして、静かに涙を流した。



仕事が休みの日に携帯ショップに行って壊れた携帯をみてもらった。

修理を頼もうかと思ったけど、それは出来なかった。

「お取り替えになります」

仕方がない。

これもいい機会かもしれないから、機種変更しようかな。

「でしたら、せっかくですからスマートフォンにしませんか?」

スマホかぁ。

もう周りのみんなはほとんどスマホを使っているけど。

「あの、やっぱりまだ決められないのでこのままでいいです。スマホに替えたい気もしますが……」

「それではとりあえずお取り替え、ということでよろしいですか?」

「……お願いします」

結局、機種変更するのを躊躇ってしまった。

データが引き継げなかったから、見た目は全く同じでも中身がないまっさらな携帯。

それなら思いきってスマホにすれば良かったかな。

高校生で携帯を買ってもらってから今まで、いつも友也と同じ機種の色違いを使っている。

機種変更のタイミングも合わせてきた。

それが当たり前になっていた。

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