いつか、きっと。
『スマホ?まだまだ要らん。この携帯が壊れたら考えるかな。明日美もぞ?抜け駆けして自分だけ先にスマホにすっとはなしやけんな!』

なんてこと言ってたよな、友也。

でもそれって、偽りとはいえ付き合っていたからこその約束でしょ。

もう契約も解除されたんだし、気にする必要なんかない。

私はもう自由なんだから。

友也に縛られたりせず、スマホにでもなんでも替えたらいいんだ。

そう思うのに。

『私は全然平気』ってアピールするためにも、自分がしたいようにすればいいのに。

多分私はスマホには替えないだろう。

まっさらの携帯をじっと見つめる。

今までと機種は同じだけど、全くの別物。

傷もなくてピカピカで綺麗だけど、私の携帯だという愛着は感じられない。

だけど今の私にはちょうどいいのかも。

「データ消えちゃったな。わかる人だけでも入れとかんばな……」

友也の番号なら頭のメモリーに刻み込まれているのに。

今は必要ない。



佐世保にいる間に友也から連絡が来る事はなかった。

そりゃそうよね、来るわけがない。

親友というのは、しょっちゅう連絡を取り合ったりするものではないのだ。

じゃあ以前の私たちは?

付き合うフリをする前の、純粋に親友だったころの私たち。

中学まではほとんど毎日会ってたけど、高校では会う時間がぐっと減ってしまった。

たまにメールしたり電話したり、ベランダで会ったり。

あ、定期券を買う時にはお茶したりしてたっけ。

そう考えると親友ってけっこう親密なものなのかな?

でもあの頃と今では違う。

だって友也には未来という彼女がいるんだから。

いくら親友だからといって彼女がいる人にそう気安く電話やメールなんかできるはずがない。

逆に友也が私に用もないのに電話とかして来たら、それも嫌だ。

だってそんなの未来にしてみればいい気分な訳がない。

「バカじゃないの!」って怒鳴りつけてやる。

いくら私がまだ友也の事が好きだからって。

人の道に外れた事はしたくない。

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