いつか、きっと。
お母さんが行きたいと言った"海きらら"とは、佐世保の有名な観光スポット"九十九島パールシーリゾート"にある水族館の愛称。

"海きらら"は私も行ってみたいと思っていたから連れて行ってもらえるのは嬉しいけど、ちょっぴり残念でもある。

だって、以前友也と『いつか行ってみたいね』と話していたから。

それなのに、自分だけ先に行くなんて。

裏切るようで申し訳なく思ってしまう。

でも友也だって親友の私より、彼女の未来と言った方がいいに決まってる。

この期に及んでまだ私は友也と一緒に遊びに行けることを期待しているというのか。

友也のことなんていい加減気にしなければいいのに。

私が誰と何処に行こうと友也は興味もないだろうし、どうでもいいことだろう。

そうよ!お父さんお母さんと家族そろって遊びに行くなんて滅多にないことなんだから。

思いっきり楽しまないと損だよね。

私が落ち込んでるのを見越して、誘ってくれたんだろうし。

そしてやって来た週末。

朝はゆっくり起きて大丈夫だろうと思っていたのに、八時半ごろには独身寮に迎えに来られてビックリした。

「なんでそがん張り切っとると!?来ると早すぎやろ。私まだ起きたばっかりで用意できとらんし」

「あんたは休みの日はいつも寝坊助やもんね。これがもしデートやったとしたら早起きして準備万端やったろうに……」

いつもの調子で軽口を叩いたお母さんだったけど"デート"というNGワードに気づいて急にトーンダウンしてしまった。

「明日美ー。今日はお父さんとデートって思えばウキウキすっやろ?ほら早う準備して行こうで」

もう、お父さんまで……。

でも気を遣われてばかりでも楽しめないし。

「お父さんそがんこと言うてよかと?私はお母さんからお父さんば奪う気はなかよ。さ、行こっか!」

「まー、なんねその普段着は。あからさまに気合の入っとらんよ。ねえお父さん」

だって、こっちにあんまり洋服ないし。

今日は普段着でいいの。

< 226 / 317 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop