いつか、きっと。
「明日美は誰にお土産買うたとか?友……だち、とか」

お父さんもお母さんもNGワードを言わないように気を付けてくれているのか、言葉を選びながら探り探り話しかけてくる。

「うん、友達に。私には二人も親友のおるけんね。やっぱり親友には買っていってやらんばやろ」

そう、あげる予定なんてまったく立てられそうにもないのに、私は友也と未来にお土産を買った。

こうなったいまでも私は……。

「そういえばお母さん。今日は"海きらら"だけで良かったと?お母さんのことやけん"森きらら"にも行こうって言い出すとかと思っとったけど」

"森きらら"とは"海きらら"とシャトルバスで行き来できる場所にある、動植物園のこと。

「本当は行きたかって思うたけど、欲張って予定ば詰め込みすぎたらきつかやろ?ゆっくり見て回りたかったし」

その割にはずいぶん急かされたような気がしないでもないけど。

「そんなら明日は?"森きらら"ば見てから帰ってもよかっじゃなかか?」

お父さんの提案に目を輝かせたお母さん。

だけど私は……。

"森きらら"は遠慮したかった。

「私はごめんけどパスかな。こっちにおるとも今月末までやし、明日は"させぼ五番街"に行きたかなって思うとけど」

顔を見合わせてなにやらアイコンタクトを取るお母さんとお父さん。

「明日美がおらんばつまらんたい。お母さんも行ってみたかったとよ"させぼ五番街"に。じゃあ明日はそうしようか。ねえ、お父さん」

「おお、よかぞ。明日は"させぼ五番街"で決まりな!」

ごめんね、ワガママ言って。

もう大人になったつもりでいるのに、まだまだ私は子どもだね。

お母さんとお父さんの優しさに、すっかり甘えてしまっているんだから。


約束通り、翌日は"させぼ五番街"に行って買い物したりお店を見て過ごし、お父さんとお母さんは長崎に帰って行った。

「先に帰っとくけんね!あともう少し頑張らんばよ!!」

「明日美、待っとるけんな!」

二人とも……ありがとう。

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