いつか、きっと。
あの二人が部屋に帰ってきたら、私たちがいないからって心配するかも。

「有紀って、中田有紀?」

町田くんが聞いてきた。

『有紀』って名前は一人しかいなかったと思うけど。

「そう!もしかして町田くんも知っとる?有紀と上尾くんのこと」

真実が身を乗り出して話に乗ってきた。

え?どういうこと?有紀と涼介くんのことって……。

「いやぁ詳しくは知らんけど。あの二人が学校以外で一緒におったって聞いたけん」

「やっぱそう?さっきお風呂の時に『リョウくん』って言いよったとの聞こえたっさね。やっぱり上尾くんのことやったとばい」

「へえ!あの二人が付き合いよるらしかって噂は本当やったばいね!!」

あ、そうなんだ。

そんな噂知らなかった。

町田くんと真実は意気投合したように興奮しながらワイワイ騒いでいる。

小学生ではさすがに付き合ってるとか聞かなかったけど、中学生ってそういう話題には敏感だよねみんな。

もし有紀たちが部屋に戻っていたら、ここに来てもらってもいいかなと思ったんだけどな。

興奮して盛り上がる真実と町田くんを見ていると、それはマズイような気もしてきた。

微妙な空気になりそうだし。

でも、やっぱり部屋に誰もいないと心配するよね……。

知らせるだけは知らせとかないと!

そう思って立ち上がろうとしたその時。

突然、部屋が真っ暗になった。

「キャア!!」

「うわぁ!!」

な、なになに!?

もしかして……停電?

落ち着けば目が慣れてきて暗闇でもうっすらと見えるんだろうけど、突然電気が消えたもんだから心臓がドキドキしてちょっとしたパニック状態だ。

こういう時って動けなくなるものなんだね。

じいーっと黙って固まってたから体勢もそのままで。

立とうとして浮かしたままだった腰を再び落ち着けた。

こんな真っ暗な中、部屋から出ていくなんて出来ない。


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