いつか、きっと。
五月の中旬。

土曜日に休日出勤し疲れたこともあって、翌日の日曜日は朝寝坊を決め込んでいた。

どうせ予定もないし。

友也の"偽者彼女"でなくなってから、休みの日は大抵暇を持て余している。

眠っていれば余計なことを考えなくて済むし。

仕事が忙しく、疲れて眠るという今の生活は私には望ましいものだったのかも知れない。

ブーブーブーブー。

バイブレーションの音で目が覚めたのは、朝というには遅すぎる時刻だった。

しかも鳴っているのは自分の携帯ではなく、会社から支給された携帯。

休日なのに、なぜ?

まだ頭が完全に起きていない状態のまま、通話ボタンを押して携帯を耳に当てた。

「もしもし、おはようございます……。今日は休みですよね?」

『生田か?休みの日に悪い。俺だ、飯田だ。おい起きてるか生田。突然ですまんけど今からちょっと出て来れんか?』

飯田課長……。

昨日も私、休日出勤だったのに。

『瀬名が…………交通事故に遭った』

………………えっ!?

「こ、交通事故って!瀬名くんが!?」

ボーッとしてまだ起きたがらなかった頭が一気に覚醒した。

どうして?どうして事故なんかに……。

『詳しいことは後で。俺も今から病院に向かうけん、生田も来てくれたら助かる。場所は……』

電話で起こされたから、すぐに家を出られる状態ではない。

だけどゆっくりなんかしていられない。

早く準備して行かないと!

「あら明日美。やっと起きたとね。朝ごはんは……ってもう昼に近かけど。なんねバタバタして、どうかしたと?」

「お母さん、私今から出かけんばごとなったけん!ごはんは食べる暇のなか」

瀬名くんが事故に遭ったらしいから病院に行くって、言いたいけど。

ゆっくり話をしている時間なんてない。

それにお母さんは瀬名くんのことを知らないし。

同い年で同期の男性社員がいるということは話してあるけど、それ以外には特に話題に出したこともないし。

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