いつか、きっと。
「誰か!何とかしてよ~」

「真っ暗でなんも見えんけん、どこに何のあっとか分からんばい」

暗闇にみんなビビって動けないようで、話し声だけが飛び交うようになってきた。

まるで目をつぶってるのかと錯覚するような真っ暗さ。

これって目を閉じていても今と何も変わらないんじゃないの?

こんなときにそんなどうでもいいことを考えてしまい、ちょっとした興味から目を閉じてみた。

あとで考えたら、なんでそんなことをしてしまったんだろう?

まさか、予想も出来ないことだった。

目を閉じてみて、特にさっきと何も変わらないなと思った瞬間。

私の唇に何かが触れた。

!!

あまりにも突然の事に、今なにが起こっているのか直ぐには理解できなかったけど……。

この唇の感触を、私は前に一度経験している。

前の時は仰向けに倒れていて、上から押し付けられたような感じだったけど。

今は座って目を閉じたところだった。


…………キス、されてる。

ビックリして頭が混乱しているうちに解放された私の唇。

ほんの一瞬の出来事だったらしい。

だけど、ものすごく長い時間に感じてしまった。

あの唇の柔らかさ、前に感じたのと同じだった。

友也が、私にキスしたの……?

周りが急に騒がしくなり、目を開けてみると電気が点いていた。

「おいおいお前ら~暗闇ん中でなんばしよったとや?」

ニヤニヤ笑いながら部屋に入ってきたのは、郷田くんと出口くん。

「べ、別に、なんもしとらんし!」

「そうさ!しとらんよ!」

真実と町田くんがムキになって言い返してる。

友也は暗闇の中を動いたのか、立っていた。

そして、友也が座っていたはずの左隣にはなぜか涼介くんが座っている。

「りょ、涼介くん。いつ来たと?」

「ん?ついさっきけど」

さっきってことは……。

もしかして、友也じゃなくて涼介くんが……?

「言っとくけど、電気ば消したとは上尾ばい」


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