いつか、きっと。
瀬名くんが私のこと、心配してた?

「小野さんにそんなことを言ってたんですか瀬名くん。私の仕事ぶりってそんなに頼りないんでしょうか……」

「違う違う、そうじゃなか。俺もプライベートのことまで詳しく把握しとるわけじゃなかけど、瀬名が仕事だけじゃなくていろんなことに対して前向きになったなとは感じとった。その事について瀬名に聞いてみたら『生田の影響かもしれん』ってさ。同期で刺激し合ったり、ライバル意識ば持つとは悪かことじゃなかもんな。しかし、生田が近頃元気のなかことば気にしとったぞ。なんか心配事でもあっとじゃなかか?」

瀬名くんったら、小野さんにまでそんな話を……。

もう!瀬名くんこそ早く元気になってくれなきゃ。

そうじゃないと、文句のひとつも言えないじゃない。

「大丈夫です。私も瀬名くんから発破かけられて、ちょっと前向きになろうとしてるとこなんです。頑張るのはまだこれからなんですけど」

「そうか、頑張れよ生田。そいにしても楽しみやな、生田と瀬名……どっちが先に結婚すっとかな?」

小野さん……。

相手がいる分だけ瀬名くんが有利じゃないですか。

まあ、瀬名くんが彼女とどこまで進展しているのか知らないけど。

結婚考えてるっていうのも瀬名くんの一存なのかも知れないんだし。

だけど私には、なんにもない。

結婚どうのこうのよりも、まずは真正面からぶつからなきゃっていう段階なのだから。

そう、まだまだこれから。

「はい、頑張りますから私」



三日間の福岡出張から帰ってきた日曜日。

長崎に着いたのはお昼過ぎ。

ああ疲れた……。

明日からはこっちで小野さんに引き継ぎしなきゃいけないんだし、今日は家に帰ってゆっくりして……。

なんて思ったら大間違い。

「ただいまー」

「あら明日美おかえり!出張お疲れやったね。お昼は食べたと?」

「うん食べたよ。じゃちょっと私出かけてくっけん」

「え?あ、ちょっと明日美!!」

お母さんのマシンガントークから逃げるように家を出た。

どうしても行きたい場所があるんだ。

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