いつか、きっと。
やって来たのは、とある小学校のグラウンド。

長崎市内の小学校のほとんどが今日は運動会らしい。

運動会と言えば生徒たちはもちろんの事、先生だって大活躍なのだ。

そう、ここは友也が教師として勤めている小学校。

ちょうどお昼の休憩が終わり、午後の競技が始まろうとしているところだった。

こうしてこの小学校の運動会に来るのは何回目だろう。

偽者彼女だったころからずっと毎年運動会だけは観に来ていた。

友也にはいつも内緒で観ているから、見つからないようにコソコソしないといけないけど、それでもやっぱり友也の姿をこの目で見たかった。

教師一年目の運動会を『観に行きたい』と言ったら、『カッコ悪かとこば見られとうなかけん、来んで』と断られてしまった。

それでもどうしても観たかった私は、コッソリと観覧することにした。

友也に見つからずに済んだのをいいことに、毎年お忍びで運動会を観にている私。

もしかしたら今年で見納めになるのかも知れない。

友也は五年生の担任だから、きっと忙しく動いているだろう。

高学年の生徒たちはそれぞれの係活動があって、自分が出場する競技以外でも役割を担っている。

先生たちにもそれぞれの仕事があり、生徒と一緒に頑張っている姿がとても素敵だなといつも熱心に視線を送ってしまうのだ。

私の場合は運動会の競技を観戦するのが目的ではなく、懸命に生徒たちをサポートして頑張っている友也を見るために来ているようなものだから。

いや、もちろん友也だけを見に来てるんじゃない。

子どもたちの一生懸命頑張ってる姿にも感動させられてる。

自分が小学生だったころを思い出して、いつの間にか見入ってしまい、気が付いたら声出して応援してるなんてことも。

そしてハッと我に返り、キョロキョロして友也の姿を探したり。

だって常に友也の居場所は把握しておかないと。

見失ってしまって、逆に私が友也に見つかってしまっては元も子もないから。

だから今日も子どもたちに心の中で声援を送りつつ、適度な距離を保って友也をこっそり見つめている私。

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