いつか、きっと。
『瀬名くん、意識戻ったようで良かったね。今日お見舞いに行きます』

病室で携帯が使えるのか分からないけど、メールを入れてみた。

お見舞いだから何か持っていかないとな……なんて考えながら支度をしていると、メール着信の合図が鳴った。

『サンキュー!気遣い無用だから、体ひとつで来てくれよ』

なんだ、直ぐにメール返せるほど元気なんだ。

しかも『気遣い無用』とか、その言葉そのままそっくり返してやりたい。

でも一応病人なんだし、瀬名くんの意思を尊重して手ぶらで行くことにしよう。

友也とはまた機会を作って話をしないといけない。

さっきのおばちゃんの言葉を思い出した。

『友也ば佐世保まで送り込んでやるけん!』

なんで佐世保なの?

前に佐世保出張のことを知っていたから、今回もそうだと思ったんだろうか。

そういえば私、お母さんには"福岡行き"だけを口止めしたような気がする。

出張のことをうっかり話しちゃって仕方なく福岡でなく佐世保と誤魔化した……?

本当なら誤解を解くべきなのかもしれないけど、このままの方が私にとっては都合がいいのかもしれない。

お母さんが私との約束を守るために"福岡"じゃなく"佐世保"ってことにしてくれたんだろうし。

まあ、いっか。

瀬名くんの病室に行くと、タイミングが良かったのか悪かったのか瀬名くんだけしかいなかった。

「瀬名くん、意識戻って良かったね。なんかすっかり元気になったみたいけど……」

「心配かけて悪かったな。俺が突然事故って会社大変になったやろうな。忙しくさせてごめんな。今日は、休みか?」

だから、どんだけ働かせようとしてるの。

確かに急に忙しくはなったけど。

「休みだよ。瀬名くん私ね、明日から福岡に行くことになった。でも瀬名くんが仕事復帰できるまでの繋ぎ的な役割なんだ。だから早く戻って来てよ、瀬名くん。私それまでは福岡で頑張るけん」

瀬名くんは一瞬キョトンとして私を見たあと、ちょっと寂しそうな顔になった。

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