いつか、きっと。
雨の中、傘をさして歩く。

未来、いま何をしているんだろう。

なにか事情があって来れなかったのか、それとも……。

わざとすっぽかしたとか。

いやいやいや、だって今日の約束は未来の方から言い出したことだし。

わざわざ呼び出しておいて自分は来ないとか……。

まさか、まさかだけど……。

私を待ちぼうけさせようとした訳じゃないよね?

最初から来るつもりなかったとか、言わないよね?

一人で考え事していると、ついつい卑屈になってしまう。

なんでも悪い方向に考えてしまうのは悪い癖だと思うけど、今のこの状況でプラス思考に持っていくのはかなり難しい。

未来が住んでいるのは、団地の中にあるアパート。

私や友也が住んでいるMアパートと似ているけど、団地のアパートは世帯数が多いから大きい建物だ。

未来が住んでいるのは最上階の五階。

妊娠しているんだったらこの階段の上り下りはキツイんじゃないかな。

だからといって約束を守らない理由にはならないけど。

未来の家まで来たのはいつ振りだろう?

かなり久し振りな気がする。

会う時はどこかに遊びに行ったりして外で会う事が多かったから。

お互いの家を行き来していたのはまだ学生だったころの事。

特に小学生の転校する前まではしょっちゅう遊びに来てたことを思い出す。

あれから十年以上も経ってるなんて、信じられない。

この先、私がここに来る事ってあるんだろうか……。

ピンポーン。

チャイムを鳴らし、応答を待つ。

中の様子は分からないけど、シーンとしてて物音一つ聞こえてこない。

誰もいないのか、返事は聞こえないし、玄関に向かって来るような足音もしない。

ピンポーン。

もう一度チャイムを鳴らし、中の気配を探ろうと耳を澄ませてみたけど、やはり何も聞こえてこない。

未来……いないの?

未来だけじゃなくて、青柳家のみなさん誰も家にいないみたい。

これじゃ、未来がどこに行ってしまったのか知る事もできない。

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