いつか、きっと。
もう一度チャイムを押そうとして伸ばしかけた手を止めた。

何度繰り返しても、部屋に誰もいないのなら無駄なことだ。

隣の部屋にも聞こえているだろうし、これ以上は近所迷惑になりかねない。

昨日電話したときに、言えば良かったのかな。

福岡に行くってこと。

そしたら未来は私に会いに来てくれてた?

タラレバ言っても仕方がない。

私の携帯に未来からの着信がないだけでなく、私からの呼び掛けにも応じてもらえない以上どうすることもできない。

未来の口から全て聞き出して、現実を受け止めてから福岡に向かうつもりでいたけど、それも出来なくなったらしい。

未来の家のドアを見つめ、ここに次に来るとき私はどうなっているんだろうと思った。

未来はこれから先、友也と人生を共に歩んでいくんだろう。

それなのに、私は…………。

もしかしたら、もう来ることはないのかも知れない。

そんなことをぼんやり考えながら、未来の家を離れ家路を急いだ。

家に帰り着いたのは十一時二十分ごろ。

私が乗車予定の長崎駅発・福岡行き"白いかもめ"の発車時刻は午後一時二十分。

ちょうど二時間後だ。

今朝は朝ごはんも食べていない。

とても食べる気になれなかったからなんだけど、お昼近くなってさすがに空腹なのが堪えてきた。

何か食べなきゃ。

とりあえず冷凍庫で発見した、たらこパスタをレンジでチンして食べよう。

…………美味しい。

本当は食欲なんてなくて、朝も昼もご飯食べなくていいやと思っていたはずなのに。

こんなに気分最悪でも、お腹は空くんだなと思った。

ダイエットなんて今までしたことも、したいとも思わなかった私だけど……。

今度ばかりは食欲が落ちて痩せてしまうような気がしていたのに。

私が友也を想う気持ちって、実はそんなに深くなかったの?

未来の妊娠を知って、ショックを受けた悲劇のヒロインを気取っていただけだったのかな。

パスタをペロリと完食してしまった。


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