いつか、きっと。
しかしそんな大事な話し合いの場に私を呼ぼうとするなんて。

友也、何を考えているんだろう。

意味が分からない。

話題を変えよう。

「私が佐世保に出張するって、おばちゃんから聞いたとやろ」

てことは、帰ってきてから聞いたのかな。

でも私が家を出てきた時、友也は車に乗っていたよね。

まるで私を待ち伏せしていたかのように。

今日の帰り時間は夕方くらいかと思ってたのに、早く帰ってきたのはやっぱり未来に会うため?

「出張のことは母ちゃんから聞いた。昨日、俺に会いに来てくれたとって?ごめんな明日美。もう聞いたやろうけど、宿泊学習の下見で泊まりやったっさ。昨日の夜母ちゃんから電話かかってきた。だけん今日は家には帰らず車で待っとった。すれ違いにならんごとと思うて……」

そっか、電話で聞いたんだ。

電話と言えば、昨夜のことを思い出した。

私からの電話は切ったくせに、おばちゃんと私の話をしただなんて。

友也ってそんなことする人だったっけ。

また胸の痛みがぶり返しそう。

友也は私が電話をかけたことについて、何も言ってこない。

途中で切られたとはいえ、最初は呼び出していたんだから着信履歴は残っているはず。

まさかそれさえも削除して、しらを切るつもりなのか。

だとしたら私からだって言わないんだから。

私だけがショックを受けて落ち込んだなんて、そんな素振りは見せないんだからね。

ちっぽけなプライドだけど、そうやって強がっていないと……ボロボロに崩れ落ちてしまいそうになるから。

別れの時くらい、しっかりした自分でいたい。

友也に情けない私を見せたくはない。

友也も私が佐世保に行くと疑ってないようだし、誤解はそのままにしておこう。

せめてもの、仕返し。

これくらいしてもいいでしょ。

ねえ、友也。

どうして未来に会いに行くより先に、私を送ってくれたの?

罪滅ぼしのつもり?

いよいよ別れの時が迫りつつある。

運転中の真剣な友也の横顔をこっそり見つめる。

胸に焼き付けるように……。

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