いつか、きっと。
『求婚する時、ってさ』



「…………きゅうこん?」



チューリップ?

私の脳内は途端にお花畑になった。



『ピンと来とらんごたるな。ちょっと小野さんの言い方ば真似してみたとけど。つまり、御子柴がお前にアレばアレする時ってこと!』



小野さんの言い方……。

確かに私も言われたことがある。

『彼氏からの求婚はまだか』って。

…………求婚!?



「まっまっまさか!でもさ……」



友也、私に求婚なんてしてくれるんだろうか。

そりゃ私は何度も夢見てしまったけど。

偽者彼女だから高望みなんてしてはいけないと何度も自分に言い聞かせたんだから。



「友也が私に知られたくなかとやったらさ……」



友也が思う通りにさせてあげた方が良いんじゃないかな。

私にはまだ先が見えていない。

これから友也と私の関係がどうなっていくのか。

だけど友也にはきっと見えているんだろう。

私たち二人のこれからを見据えて、行くべきところへ私を連れていってくれると信じたい。



「さっきの話、聞かんかったことにする。それでよかろ?」



『御子柴にぶん殴らるっと覚悟で教えてやったとに。まあよかけど』



友也、私待ってていいのかな。



だけど今まで散々勘違いしてはいけないって思ってきたから、そう簡単に瀬名くんの言ったことを鵜呑みには出来ない。

油断したら、心が舞い上がってしまって歯止めが利かなくなりそうで怖い。



ずっと友也のことだけが好きだった。

偽者でも彼女になれて嬉しかったし、ますます友也への想いが募っていった。

いつかは、本当に付き合える日が来ると夢見ていた。

誰にも嘘つくことなく、後ろめたい気持ちになることもなく、堂々と友也のことを『私の彼氏』だと言える時を待ちわびていた。



友也は最初から私のことなんてお見通しだったんじゃないのかな。

私の"友也が好き"だという想いが溢れすぎて、私自身が気持ちをコントロールできなくなることを。

もしかしたら、友也自身もそうだったりして。

お互いの気持ちをセーブして、適度な距離感を保っていたかったのかも知れない。



友也は昔気質なところがあるから、順番は守ろうとしてたはず。

お互いの想いも確かめ合っていないし、付き合ってもいない。

だから婚前交渉なんて言語道断。



いやさすがにそれは……時代錯誤かな。

キスだってしてるのに。


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