いつか、きっと。
友也とベランダ以外で会えるのは定期券を買う日だけだろうと思ったけど、一度だけ海で花火をしようと誘われた。

友也が友達を誘うって言ったけど、珍しく誰も捕まらずに二人きりになったのは嬉しい誤算。

最後の線香花火が終わったときに、ちょっとドキドキするような場面が訪れたんだけど……。

真実と町田くんが絶妙なタイミングで現れてムードぶち壊し。

またこの二人に邪魔されたって心の中でしょげてたら、真実たちが花火を買いに行くためにそこを一時的に離れて……。

その隙に友也が取った行動はあまりにも大胆なもので、驚きを隠せなかった。

それは、友也が私の手を掴んで走り出したから。

「逃げっぞ」

真実からあとで文句言われるとか、二人から私たちの関係を怪しまれるとか、いろんなことが頭の中をグルグル回っていたけれど。

もう、なるようになれ!なんて開き直ると逆に楽しくなってきた。

愛の逃避行みたい……なんて。

一人で勝手に盛り上がってしまったことは、友也には内緒。


そのまま公園まで走ってきた私たちは息を切らせながらベンチに座り込んだ。

「はぁはぁはぁ……。友也が急にあがんこと……ビックリした……もう、キツか…………」

「まさかアイツらが来るとは………予想外、やったし。ハァっ確かにキツかったな。トレーニングかと思うた。……なあ……明日美」

「はぁ……はぁ…………なぁに?」

友也はテニスで鍛えているから私ほど息は上がってなかった。

それでもキツかったなんて、よっぽど嫌だったの?

二人きりの時間を邪魔されたってことが……。

「さっきの線香花火けど。最後のヤツさ、落ちんかったやろ?」

「う、うん……。そうやったよね」

やっと息が落ち着いてきた。

そう思ったのに、またドキドキが止まらなくなってしまったのは友也のせい。

さっき邪魔されてできなかったと思ったのは、私の自意識過剰じゃなかったんだ。

不意打ちだったから閉じてなかった目をゆっくり閉じて、友也とのキスに心をときめかせた。

夏休みの素敵な思い出をありがとう、親友。


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