いつか、きっと。

｢そりゃもちろん『ましゃ』みたいなさー？｣

……言うと思った。

長崎人なら福山雅治さんがみんな好きだと思う。

私だってそうだもん。

長崎からあんなカッコいいスターが生まれたなんて、誇らしい。

ただ、現実的には自分の周りにそんなイケメンなんて見当たらない。

｢未来は面食いやもんね。芸能人とは違うとやし、もっと現実みらんば｣

｢ちぇー。ドラマみたいな素敵な恋ばしたかー」

恋か……。

私にもいつか好きな人ができるのかな？

同じクラスの女子の間でも、恋の噂話がしょっちゅう飛び交っている。

そういう話題はあまり得意ではないから、なおさら馴染めなかったりするんだけど。

未来とだったら、恋バナでもなんでも楽しいのに。

「やっぱり転校しとうなかったなぁー……」

「え、もしかして明日美ってコッチに誰か好きな人のおったと？」

未来の目が急にキラキラと輝きを増したように見える。

さっきまでつまらなさそうだったのに、楽しそうな明るい笑顔を私に向けていた。

「ち、ちがうよ！好きな人なんておらんし！！」

ここはハッキリと言っておかなきゃ。

勘違いされていろいろと探り入れられたら大変。

「なーんだチェッ。誰か好きな人おるんやったら私が手伝ってあげようかなって思ったとに｣

ほら、やっぱり。

こういうことに首を突っ込みたがるんだから。

｢ないない。そういう未来は？好きな人おらんと？｣

｢うーん、いまいちかな。いい人とか、頼りになるなとか思う人はおってもね。なかなかときめかんもんね。そういう人は友達ってしか思えんし｣

ドキッとした。

いくら苦手とは言っても、私だってクラスメイトの恋バナに加わることだってある。

そういう時に男女の区別なく人気者の友也は話題に上ることが多い。

そんな友也に対するみんなからの評価は『友達止まり』らしい。

クラスの女子からは恋愛対象として見られていないようだ。

私だってそう。

引っ越して初めてできた友達だし、転校して同じクラスになった私をいろいろと助けてくれたのは友也だった。

だから友也がいてくれてよかったって思う。

これからもクラスメイトとして、お隣さんとして、仲良くできたらいいなって思ってる。

でも、異性として意識しているかっていうと、それはない。

前の学校では男子とそんなに仲良かったわけじゃないから、男友達ができて新鮮な感じがするけど。