いつか、きっと。
付き合ってる"フリ"の契約期間は今のところは高校卒業まで。

その後、契約を更新するのかどうかはその時の判断で決めることになっている。

とりあえず高校生の間は友也の"彼女"でいられる。

高校を卒業したらどうなるのかな。

私は就職するつもりでいるけど、友也は大学に行くんだろうし。

大学って出逢いの場じゃない?

私みたいな偽者なんかじゃなく本気の彼女を作るつもりだったりして。

もう!先のことなんてまだ分からないじゃない。

こんな想像でネガティブになっちゃダメだよ。

そんな私を友也が好きになってくれるわけがないんだから。

この"偽者彼女"は私にとってチャンスなんだと思えばいい。

フリとは言え、友也の両親以外には"付き合ってる"というアピールも必要になるだろうし。

だとしたら必然と二人一緒に過ごす時間が増えるということ。

どうしよう……嬉しくてたまらない。

でも、友也はどうなんだろう?

友也も嬉しいと思ってくれてる?

それとも、私だけなのかな……。

友也の気持ちがいまひとつ掴めない私は、喜んでいいのかどうなのか不安定な思いを抱えたままだった。

付き合うって言っても、友也も私も部活があるからデートとか出来ないだろうし。

でもそんなこと言ってたら今までと大して変わらないんじゃないかな……。

田代先輩と未来にだけ"付き合ってる"アピールすればいいだけのことなら、わざわざ他の人にまで知らしめる必要もないだろうし。

友也が何を考えているのか、正直言ってよく分からない。

ただハッキリしているのは私が友也のことを好きで好きで仕方がないっていうこと。

これだけは揺るぎない私の想い。

これからの高校生活、どんな風になるんだろうか?

バラ色の日々を妄想するだけでハッピーな気分になれそうだけど、自分だけ浮かれてたらって思うと落胆が大きいから、それもツライ。

だからどうしても不安定になってしまうんだ。

私の複雑な胸の内を知ってか知らずか……。

付き合ってるフリをするようになってからの友也はちょっと今までの友也とは違うと感じるようになっていった。

毎日メールか電話を必ずしてくれるようになった。

これまでは私の方からメールすることが多かったし、電話なんて本当にたまにしかしてなかったし。

それが用事が無くても毎日連絡を取り合うようになった。

そして月末恒例の定期券購入日。

友也が部活を早退して、定期券を買った後でデートする日。

これも特に変わる事はないと思っていたけど……。

なんと友也の方から当たり前のように手を繋いでくるようになった。

『俺たち付き合ってます』っていうのを周りの人に知らしめるためのアピール?

単純に嬉しさを隠せない私は自然と緩んでしまう頬をどうやって誤魔化そうかと困ってしまう。

でも気になって友也の顔をチラ見したら、友也もにやけてた。

これじゃまるで付き合いたての初々しいカップルじゃないの!

もしかして"偽者"って現実にとらわれ過ぎてた?私……。

もっと楽しまないともったいないっていう気がしてきた。

いいよね?ちょっとくらい勘違いしちゃったとしてもいいよね……?

たとえ"偽者"の彼女でも。


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