いつか、きっと。
『おーい、明日美ぃ。おいっ明日美!聞こえんとか?明日美~!!』

動きをピタッと止めた友也。

『ちょっとお父さん!!二人の邪魔せんと!もしかしたら盛り上がっとるかもしれんたい。酔っぱらいは嫌わるっばい』

…………お父さんにお母さん。

まさに今、盛り上がってるんだけど。

私の心臓がやかましいくらいにね。

至近距離で見つめ合ったままの私たちだけど……。

気まずい!

なんとかしなきゃと口が勝手に動いた。

「おっ、お父さんに、呼ばれたけん……行ってこ」

友也が退いてくれるのを待って立ち上がろうかという私の作戦は呆気なく崩された。

退くどころか、押し付けられるように触れ合わされた唇。

ビックリして目を閉じるのを忘れた。

友也のまつげって意外と長いかも…なんて観察してしまったし。

向こうの部屋からはまだワイワイと楽しそうな声が響いている。

私、呼ばれたのに行かなくていいの?



もっと……もっとしてほしい。

でも、このままキスしていていいの?

私自身どうしたいのか分からなかったけど、結局は友也に抵抗することなくキスを受け止めていた。

そしてゆっくりと離された唇。

長かったようで多分短かった、触れるだけのキスを名残惜しく感じてしまう。

友也の顔はまだすごく近くにあって、今なら私の方からキスできるかもって思ってしまった。

だけどギリギリのところで心にブレーキをかける。

「行かんば……。お父さんに呼ばれたけん、行ってこんば……」

今更だけど、そうすることで逃げ道を作ろうとしている。

だってこのままじゃ……。

「行くな」

たった一言、短い台詞を呟いた友也がまた唇を重ねてきた。

それほどカサカサしてないつもりだけど、潤すかのように友也の舌が私の唇をじっくりとなぞっていく。

友也とのキスは何回目だろうか。

こんなキスは今までにはなかった。

偽者だけど一応"彼女"だから?

これも友也が言った『節度ある付き合い』の範疇に入るの?

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