いつか、きっと。
三年生になると友也は大学受験、私は就職に向けて落ち着かない日々を過ごすようになった。

未来は田代先輩が東京の大学に進学して、遠距離になってしまったから寂しそうに見えて仕方ない。

私は未来の親友としてできることがあれば何でも力になろうと思った。

友也も受験勉強に力を入れていたから邪魔したくなかったし、未来と一緒に過ごす時間をなるべく作るように心掛けていた。

「明日美はよかねー。私も遠距離じゃなくて近くにおってくれる人の方がよかとかな。東京とか行ってしもうたらもう二度と長崎には帰って来んやったりして……」

こんな弱気発言をすることが多くなった未来。

「田代先輩からなんか言われたと?」

まさか先輩の方からもう別れようとか……。

まさかね、ちょっとチャラく見える時もあるけど、先輩は未来のこと大好きなんだろうなって思うし。

離れてるとだんだん不安になってしまうんだろうな。

「ううん。テツ先輩はなんも言わんよ。まあ友也くんとラブラブな明日美には分からんさ」

なにそれ……。

私は本気で未来のこと心配してるのに。

私が未来の事を分からないと言うのなら、未来だって私の気持なんか分かるはずがない。

未来は私みたいな"偽者"なんかじゃなく、本物の彼女なんだから。

きっと田代先輩から『好き』って言葉ももらっているんだろうし、未来からも先輩に『好き』って気持ちを伝えているだろう。

そういう恋人同士だったら当たり前のことを私と友也は出来ずにいる。

お互いの気持ちを確認し合ってないんだから、付き合っているとはいっても結局は偽りの関係でしかないんだ。

じゃあこの偽りの関係を終わらせた方がいいのかというと、そういう訳じゃない。

偽者でもいいから友也の彼女で居たいって思ってしまう私もいる。

今は偽者でも、いつかは……。

いつかは本物になれるんじゃないかって期待してしまうから。

だから今はこのままでいいのかも知れない。

だけど、どうしても気持ちは揺れてしまうもの。

契約期間が終わりに近づくとともに、私の心は落ち着きをどんどん失っていった。


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