いつか、きっと。
「生田、お前はM重工を希望してたか?ちょっと話したいことがあるんだ」

担任の鈴木先生から声をかけられた。

放課後に職員室に呼び出され、ある提案を持ちかけられる。

「M重工は希望者が多く、選考の倍率も高いし成績上位者が争わないといけない」

「それはもちろん覚悟してます。先生、私もしかして戦力外ですか?」

今までM重工目指して頑張って来たというのに……。

でもそんなこと選考前に生徒に話してもいいの?

「そうじゃないけど、生田は非常に微妙なラインなんだ。もしここで選考に通らなかったらまた次を探して申し込まないといけないだろ。時間のロスは否めないし、次の選考もまた更に競争率が激しくなる。そこでだ……」

そう言ってメモ紙を渡してきた先生。

そこに書いてあったのは……。

「Rエンジニアリング株式会社?」

聞いたことがあるような、ないような会社名だった。

「M重工の関連会社だけど、お前ここの就職試験受けてみないか?」

わ、私が!?

でも待って、急にそんなことを言われても……。

「先生、私この会社の求人票見てないと思うんですけど。見せてもらってもいいですか?」

「求人票は生徒には公開していないんだ。Rエンジニアリングの求人は特殊でJ商とN商から一人ずつ採用したいってことなんだが、校内選考ではなく教師からの推薦で受験者を決める事になってるんだ」

「えっ!ちょちょちょっと待ってください!ということは、先生が私を推薦してくれるってことですか?」

「まあそういうことだ。この会社ではパソコンでのスキルが役に立つだろうと思ってな。お前は就職に備えてパソコン部で頑張ってたし、成績もM重工を狙えるくらいなんだから問題ない。どうする生田?」

ど、どうするって……。

もしこのありがたい推薦のお話を断って、M重工に申請を出したとしたら?

微妙なラインだと言われたし、選考に通るかどうか不安になって来た。

もし選考に落ちてしまったら……。

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