いつか、きっと。
できればM重工に就職したいけど、試験を受けられないんじゃどうしようもない。

妙なこだわりを捨てきれずに後悔することになるよりも、柔軟な発想で視野を広げることができたら、私の未来は明るくなるのかも知れない。

M重工関連会社なら、就職先として申し分ないし。

「先生、Rエンジニアリングの就職試験受けたいです。よろしくお願いします!」

「そうか良かった!お前に断られたら別の誰かを推薦しないといけないからすぐに決めてくれて助かったよ。生田ならきっと大丈夫だ。じゃあ求人票のコピーを渡すから、よく読んでおけよ」

M重工に就職したい一心で脇目も振らずに突っ走ってきた。

だからM重工の校内選考に申請を出さないことになるなんて、自分でもビックリだ。

本当はここで即決せずに両親に相談するべきなのかもしれないけど。

多分『明日美が自分で決めなさい』と言われるのが目に見えてるから、それなら決断は早い方がいいだろうと思った。

M重工の関連会社ならお父さんもよく知ってるだろうから、どんな会社なのか聞いてみよう。

友也にも推薦のことを報告しないとね。

きっと驚くだろうな。

M重工を受けないことになったけど決して後ろ向きな理由じゃないから、友也も分かってくれるよね。

その夜、早速電話をかけてみた。

「友也、"Rエンジニアリング"って会社知っとる?」

『聞いた事ある……。確かM重工関連じゃなかったかな。それがどうした?』

「うん……。私さ"M重工業"の校内選考に申請出すつもりやったとけど、出さんことにした」

『は!?明日美はM重工が第一志望やったろ?諦めるとか明日美らしくなかな』

「違うとって!先生から"Rエンジニアリング"の試験ば受けてみらんかって言われたと。M重工の選考に通るか通らんか微妙とも言われたっさね」

『微妙か……。でもそいやったら通る可能性もあるってことやろ?チャレンジしてみてもよかっじゃなかかな』

友也は私がM重工を熱望していたのを知っているから、簡単に諦めてしまったようで納得いかないんだろう。

「私も悩んだとよ。でもね変なこだわりで自分の可能性ば狭めてしまうような気のして。先生が『生田なら大丈夫』って言うてくれたし。それに私ば見込んで推薦してくれるとやろうし……」

『えっ推薦!?明日美が先生から推薦されると?それ、凄かやっか!』

「そ、そうかな……。私より成績良か人おるはずけどね」

どうして先生は私を推薦してくれるんだろう?

『そいは先生の判断やろ。成績だけじゃなくていろんな事ば総合的に考えて決めるとやろうし。先生も責任重大やけん推薦者は厳しい目で選ぶはず。良かったな明日美!お前の頑張りば先生はよう見とってくれたってことぞ?頑張れよ就職試験。俺も全力で応援すっけんな』

「ありがとう友也っ。自分の力ば信じて精一杯頑張るけん!友也も受験大変やろうけど、頑張って!!」

私たちはお互いにエールを贈り合ったのだった。

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