いつか、きっと。
「そうさな、もし推薦入試で合格できたらクリスマスはデートしよう。明日美の就職決まったお祝いもまだやし。映画でも観に行く?」

クリスマスに友也とデート!

受験が終わるまで楽しいことはお預けだと考えていたから、まさかクリスマスを一緒に過ごせるなんて……。

「うんっ!!映画行きたかったんだ。楽しみにしとるけん推薦試験頑張ってね。私も友也からしてもらったごと全力で応援する!」

私に出来る事なんて、たかが知れてるけど。

電話やメールで励ましの言葉を送ったり、夜遅くまで勉強(推薦試験は学力テストではなく面接と小論文らしいけど)してるだろうと思って夜食を差し入れしたり、栄養ドリンクに手書きのカードを付けて渡したりした。

会ってゆっくり話したりできないのは寂しいけど、試験が終わるまでは我慢我慢。

推薦試験に合格したら、あとは卒業までなにも心配は要らないはずだから。

クリスマスにはデートできるかもしれないんだし。





そして、待ちに待ったクリスマス・イブ。

終業式だったその日は、学校から帰ったあと着替えて友也と一緒にバスで長崎駅のアミュプラザへ。

約束の映画は『明日美が観たいやつでいい』ってことだったから、私の独断でラブストーリーに決めた。

話題になってたからどうしても観てみたかったの。

主人公の女性が大学で好きな人が出来て、だけどその相手は自分の親友と付き合う事になって……って失恋しちゃうんだけど、そこからまた衝撃的な展開が待ってるんだ。

なんと彼氏とラブラブで幸せいっぱいだった親友が突然の事故に遭ってしまって……。

すごく切ない恋模様だったり、友情と恋愛の狭間で揺れ動く主人公に幸せになってほしいなって、ものすごく泣けてしまった。

「明日美、泣き過ぎじゃね?まさか号泣するような切ない系ば明日美が選ぶとはな!これ一応俺からの就職内定祝いのつもりやったっけど」

「えっ?十分嬉しかよお祝いしてくれるなんて。だって私が選ばせてもらったし。これ、うれし涙やし」

ごめんちょっとだけ盛った。

映画の主人公、結子さんみたいな深い愛情を私は友也に注げるだろうか?

高校生活も残り約二ヶ月。

卒業したら私たちの関係ってどうなってしまうんだろう……。

「……まあよかさ、今は泣いても。でも俺以外の男の前で無防備に泣いたりすんなよ。就職したら学生時代とは違うとやけん、流されんこと自分ばしっかり持っとかんば。明日美なら大丈夫やろうけどな」

「ね、友也。次はゲーセン行こっ!映画が友也からのお祝いなら、私からの合格祝いはゲーセンでコインゲームね。ビンゴでコインじゃんじゃん増やして遊ぼう!」

「え!なんか、ズルくねぇ!?映画とゲームじゃ釣り合わん……」

ちょっと不満気な友也の手を引っ張ってゲーセンへと向かう。

『俺以外の男の前で無防備に泣いたりすんな』とか『就職したら学生時代とは違う』って……。

どういうつもりで言ってるの?

思わせぶりな言葉は、例え偽者でも私が彼女だから?

卒業したらもう友也の彼女ではいられないから、もっとしっかりしろってこと?

そんなこと、聞けない。

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