我の日々より難解な
 一体どんな原理で車は動いているのか。犬は前を向いたまま運転席に座り、はあはあ言って舌を出していた。しかし、右に助手席があるとは何とも言えない不思議な感じである。
 目の前に階段が出てきた。私はそれを下るのだと思っていたが、目の錯覚だったのか、車は激しく揺れながらそれを上っていった。
 「お前さん、なんで自分を殺したんだい」
 犬がそういい、私はさっきまでのことを思い出した。
 「私は何をしたんですか」
 そういうと犬はゲラゲラと笑い出し、それきり私の問いには何の反応も示さなかった。私が不快な思いをして嫌だなと感じると車は止まった。私はそこで車を降りると果てしない階段を歩いて下った。時間の感覚はもう全く無かった。
 果てしない階段を下っていると、横に伸びる道があった。気付けば周囲は道だらけで、エッシャーの絵のようだった。
 私は疲れて階段に腰を下ろした。すると手を差し伸べてくれる人がいた。君だった。私はありがとうといった。その手を借りて起き上がると君は言った。
 「解ったかい、神は死んだんじゃないんだよ」
 聞いたことがある。哲学者ニーチェの一言だ。

 神は死んだ

 
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