クリスマスなんて夢見ない
 いつもこうだ。
 ひとみはぎりぎりで乗り込めた満員電車の中で思う。
 素直になれない。
 見栄を張ってしまう。
 強がってしまう。
 嘘をついてしまう。
 本当は素直になりたい。
 強がりたくない。
 嘘なんてつきたくない。
 電車が揺れる。
 それに合わせるように人の波が揺れる。
 ひとみの心も揺れる。。
 松戸のことを想って揺れる。
 大きく揺れる。
 私は駄目な女。
 弱い女。
 嘘つきな女。
 ひとみはつかまっていた吊り革をさらに握る。
 嘘つき。
 嘘つき。。
 嘘つき。。
 ひとみは小さくため息をつく。自分で自分を傷つけているみたいだ。こんなことをしていても何の解決にもならない。
 何の役にも立たない。
 何もならない。
 何も……。
 
 
 
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