課長の瞳で凍死します ~羽村の受難~
「おやすみ」

 もう一度、そう言って出て行く。

 扉の閉まる音がした。

 なんか……幸せだなーと真湖は思う。

 つわり大変だったし。

 産むのも……

 いや、産むのはそうでもなかったか。

 でも、病院から帰ってからは、やっぱり、てんてこまいで、今も全然起き上がれないし、口もきけなくて。

 泥のように疲れて眠るって、こんな感じなんだなあって思うけど。

 でも、幸せだと感じる、と思ったとき、

「……ふえ」
と小さく赤ちゃんが泣いた。

 真湖は、ぱちっと目を覚まし、起き上がる。
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