課長の瞳で凍死します ~羽村の受難~
 おそるおそる覗き込んでみたが、寝言のようなものだったらしく、赤ちゃんは、小さな手をぎゅっとしたまま眠っていた。

 ……可愛いなー、と思いながら、真湖はその顔を眺める。

 最近の子は出てきたときから、白くてふっくらして、可愛い子が多いが。

 この子は本当に昔ながらの猿だな、と思って笑った。

 しかし、あれだけ起きられなかったのに、赤ちゃんの泣く気配を感じただけで、飛び起きられるとは。

 母親の本能ってすごいなーと人間の身体の造りに、感心しながら、真湖は赤ちゃんの顔を覗き込んだ。

 ぱっと頭に浮かんだ名前を呼びかけてみようと思ったのだ。

 まま……

 まき……

 こき……

 ……駄目だ。
 課長に洗脳されている。
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